消費者金融のカードローンやクレジットカードのキャッシングは、総量規制により年収の3分の1を超える借入ができません。
総量規制は貸金業法により定められているため、銀行のカードローンなど貸金業法が適用されない借入は対象外です。
また、条件付きで例外的に総量規制対象外になる場合もあります。
総量規制対象外であれば、年収の3分の1を超える借入も可能です。
そこで、この記事では総量規制対象外の借入について解説します。
この記事でわかること
- 総量規制年収の3分の1を超える借入ができない
- 総量規制は貸金業法が適用される消費者金融のカードローンやクレジットカードのキャッシングが対象
- 銀行のカードローンは総量規制対象外だが自主的な規制がある
- 緊急の借入はおまとめローンなどは条件付きで総量規制対象外になる可能性がある
- 住宅ローンのような目的別ローンは総量規制から除外されている
総量規制対象のローンは原則年収の3分の1以上借りられない
総量規制とは、年収の3分の1を超える貸付を禁止する、貸金業法上で定められたルールのことです。
(過剰貸付け等の禁止)
第十三条の二 貸金業者は、貸付けの契約を締結しようとする場合において、前条第一項の規定による調査により、当該貸付けの契約が個人過剰貸付契約その他顧客等の返済能力を超える貸付けの契約と認められるときは、当該貸付けの契約を締結してはならない。
2 前項に規定する「個人過剰貸付契約」とは、個人顧客を相手方とする貸付けに係る契約(住宅資金貸付契約その他の内閣府令で定める契約(以下「住宅資金貸付契約等」という。)及び極度方式貸付けに係る契約を除く。)で、当該貸付けに係る契約を締結することにより、当該個人顧客に係る個人顧客合算額(住宅資金貸付契約等に係る貸付けの残高を除く。)が当該個人顧客に係る基準額(その年間の給与及びこれに類する定期的な収入の金額として内閣府令で定めるものを合算した額に三分の一を乗じて得た額をいう。次条第五項において同じ。)を超えることとなるもの(当該個人顧客の利益の保護に支障を生ずることがない契約として内閣府令で定めるものを除く。)をいう。
引用元:e-Gov法令検索 貸金業法より
総量規制の対象となるのは貸金業者による貸付で、具体的には以下のような貸付に対して適用されます。
- 消費者金融
- クレジットカードのキャッシング
このような貸金業者からの借入の総額が3分の1を超えると、原則としてそれ以上の借入ができません。
総量規制は個人に対する貸付のみ適用されるため、法人は対象外です。
個人事業者への貸付は原則として総量規制の対象となりますが、事業実績や事業計画などに基づき、例外的に年収の3分の1を超える貸付が認められる場合もあります。
総量規制の誕生により多重債務者が減少
総量規制が施行される以前は複数社から多額の借入ができる状態で、借金で借金を返済する多重債務に陥る人が増加し社会問題となっていました。
この問題を解決すべく貸金業法を改正し、2010年6月より施行されたのが総量規制です。
総量規制には効果が見られ、施行前と比べて多重債務者の数や借入残高は減少しています。
多重債務者の数 | 借入残高 | |
---|---|---|
2008年3月末 | 496万人 | 106.6万円 |
2009年3月末 | 392万人 | 95.7万円 |
2010年3月末 | 458万人 | 79.7万円 |
2011年3月末 | 401万人 | 67.1万円 |
2012年3月末 | 301万人 | 59.0万円 |
2013年3月末 | 240万人 | 54.8万円 |
多重債務に関する消費者生活相談の件数に関しても、2010年度が71,827件あるのに対し、2019年度には23,099件まで減少しました。
このように、総量規制は多重債務に対して一定の効果が見られています。
銀行のカードローンは総量規制対象外だが自主的な規制がある
総量規制はあくまで貸金業法で定められているため、銀行法が適用される銀行のカードローンは対象外です。
ただし、ほとんどの銀行では自主的な規制により、年収の3分の1を超える貸付を行っていません。
自主規制を行うようになった背景には、銀行による過剰な貸付が挙げられます。
2010年6月に総量規制が施行されたことにより、消費者金融に起因する多重債務や過剰貸付は減少したものの、銀行は過剰貸付により融資額を伸ばしていきました。
その結果、多重債務者や自己破産者の数は増加傾向となります。
この状況を重く見た日本弁護士連合会が2016年9月に内閣総理大臣、内閣府特命担当大臣、衆参両議院議長、全銀協会長に対し、「銀行等による過剰貸付の防止を求める意見書」を提出しました。
日弁連の意見書を受けて2017年3月に全国銀行協会が「銀行による消費者向け貸付けに係る申し合わせ」を公表し、自主規制による過剰貸付の防止を銀行に対して喚起します。
その結果多くの銀行は年収の3分の1、一部の銀行は年収の2分の1を貸付上限として定めるようになりました。
そのため、実質的には銀行のカードローンも、総量規制以上の借入ができません。
総量規制対象外でお金を借りる方法8選
消費者金融のカードローンは総量規制が適用されるため、原則として年収の3分の1を超える借入ができません。
ただし、以下の方法の利用により、総量規制対象外で借入できる可能性があります。
- 緊急性が認められる場合は条件付きで総量規制対象外になる
- 信用金庫や農協、ろうきんのカードローンを利用する
- 銀行や消費者金融のおまとめローンを利用する
- 専業主婦は配偶者貸付を利用する
- クレジットカードのショッピング枠を利用する
- 担保があるローンを利用する
- 利用目的が明確なら目的別ローンを利用する
- 個人事業主はビジネスローンや事業者ローンを利用する
緊急性が認められる場合は条件付きで総量規制対象外になる
緊急でお金が必要になった場合は、以下の条件付きで総量規制の枠を超えて借りられる可能性があります。
- 借入額10万円以下
- 3ヶ月以内に返済
対象となるのは、申込者やその親族の医療費が必要な場合や、病気によって収入がなくなり当面の生活費が必要な場合などです。
この例外貸付が適用された場合、その後の借入については例外分を除いた借入額が総量規制の対象になります。
ただし、全ての貸金業者が緊急の貸付に対応してくれるとは限りません。
各市町村では生活困窮者向けの公的融資を行っているため、対応してくれる貸金業者が見つからない場合は、居住している市町村へ相談しましょう。
信用金庫やJA、ろうきんのカードローンを利用する
信用金庫やJA、ろうきんのカードローンは総量規制対象外のため、会員の人は利用を検討してみましょう。
信用金庫やJA、ろうきんは会員の出資により成り立っているため、金利や申込条件などの面で会員を優遇しています。
非会員でも利用できる商品もありますが、会員とは金利や申込条件が異なる可能性が高いのです。
また、信用金庫やJA、ろうきんに加入するには出資金が必要なため、一般的なカードローンと異なり最初にいくらかの出費が必要になります。
出資金額は団体により異なりますが、最低金額の目安は以下のとおりです。
信用金庫 | 5,000円程度 |
---|---|
JA | 10,000円程度 |
ろうきん | 1,000円程度 |
新規で利用する場合は団体への加入手続きが必要となり、実際にカードローンを利用できるようになるまでに数週間〜1ヶ月程度の時間を要します。
そのため、基本的に信用金庫やJA、ろうきんのカードローンの利用は、既存の会員におすすめの方法です。
銀行や消費者金融のおまとめローンを利用する
貸金業法では顧客が一方的に有利になる貸付や、借入残高を減らすための借り換えを、例外貸付として分類しています。
一般的におまとめローンを利用すると、金利が下がり利用者が楽に返済できるようになるため、おまとめローンは総量規制対象外となります。
ただし、おまとめローンを利用しても、必ず総量規制対象外になるわけではありません。
総量規制対象外で利用するには、借り換え後の金利が借り換え前よりも低くなる必要があります。
例えば借り換え前の金利が年12.0%、おまとめローンの金利が年13.0%だった場合、おまとめローンへ借り換えても総量規制が適用されます。
そのため、おまとめローンを利用する場合は、必ず借り換え前よりも金利が低い商品に申し込みましょう。
専業主婦は配偶者貸付を利用する
収入のない専業主婦は、総量規制により原則としてお金が借りられません。
しかし、総量規制対象外となる配偶者貸付を利用すると、配偶者と併せた年収の3分の1以内の借入ができます。
配偶者貸付は配偶者の同意が条件のため、専業主婦の独断による借入はできません。
そのため、配偶者貸付では以下の書類が必要になります。
- 同意書
- 申込者と配偶者両方の本人確認書類
- 配偶者の収入証明書(申込者に収入がある場合は申込者の分も必要)
- 婚姻関係証明書(住民票の写しなど)
配偶者に知られたくないからといって、同意書を偽造するのは法に抵触するため、必ず同意を得た上で申し込みましょう。
クレジットカードのショッピング枠を利用する
クレジットカードのショッピング枠は、総量規制の対象外です。
クレジットカードを利用すると後日カード会社から利用分の請求が来るため、カード会社から借入をしているような感覚を覚える場合があります。
しかし、カード会社はお金を貸しているのではなく、あくまで代金の立替えをしてるだけのため、ショッピング枠に貸金業法は適用されません。
そのため、旅行や買い物などクレジットカード決済のできるものに関しては、総量規制とは関係なく利用できます。
総量規制対象外だからといって無計画に利用すると、支払いが困難になる可能性が高いため、ショッピング枠は無理のない範囲で利用しましょう。
なお、同じクレジットカードでもキャッシング枠には貸金業法が適用されるため、総量規制により年収の3分の1を超える利用はできません。
担保があるローンを利用する
以下を担保としたローンに関しては、総量規制対象外になります。
- 不動産
- 自動車
- 有価証券
担保とは、債務者が返済できなくなった際に、不利益を補うために債権者に対して差し出す物品のことです。
万が一返済ができなくても担保を換金して貸付金を回収できるため、返済能力があるとみなされて総量規制から除外されています。
担保ローンは担保の評価に時間がかかるため、消費者金融のカードローンのように即日利用できるわけではありません。
また、事務手数料や抵当権登記費用などの諸費用が発生するため、目的があってまとまった金額が必要な人におすすめです。
利用目的が明確なら目的別ローンを利用する
住宅ローンや自動車ローンなどの目的別ローンは、総量規制の対象外です。
住宅購入には数千万円の費用がかかるため、年収の3分の1以内という制限を設けてしまうと、ローンが組めない人がほとんどでしょう。
そのため、多額の貸付を行う目的別ローンは総量規制対象外となり、年収の3分の1を超える金額の借入が可能です。
なお、目的別ローンの利用時は担保が設定されます。
例えば、住宅ローンであればローンで購入した住宅を、自動車ローンであればローンで購入した自動車を担保とします。
万が一返済できなくなった場合は、購入した物品を回収されてしまうため、総量規制対象外であっても無理なく返済できる範囲でローンを組みましょう。
個人事業主はビジネスローンや事業者ローンを利用する
個人事業主が一般的なカードローンを利用する場合、原則として総量規制の対象となります。
ただし、ビジネスローンや事業者ローンに関しては、総量規制対象外となる例外貸付に該当します。
そのため、個人事業主が事業目的で借入をしたい場合は、ビジネスローンや事業者ローンの利用を検討しましょう。
ビジネスローンや事業者ローンの場合、事業計画や収支計画、資金繰りなどを確認される可能性が高いです。
例えば、アイフルビジネスファイナンスの事業者向けビジネスローンでは、以下の書類の提出が必要になります。
- 本人確認書類
- 確定申告書
- 事業計画表・資金繰り表
滞りなく審査を進めるためにも、日頃から事業計画や収支計画、資金繰りをしっかり立てておきましょう。
なお、ビジネスローンや事業者ローンは、利用目的が事業資金に限定されています。
個人事業主の場合は生活資金と事業資金の境界があいまいになりがちですが、契約違反にならないためにも、必ず事業資金としてのみ利用してください。
総量規制対象外でお金を借りる際のポイント
いくら総量規制対象外であっても、一般的なカードローンと同じように審査があるため、必ずお金が借りられるとは限りません。
また、総量規制により借入ができないからといって、違法業者や個人間融資を利用してしまうと、犯罪に巻き込まれたり法外な金利を要求されたりする恐れがあります。
そのため、総量規制対象外でお金を借りる場合は、以下のポイントを押さえましょう。
- 他社からの借入件数・借入額を減らす
- 審査に通るためには安定した収入が必須
- 過去5年以内に金融事故を起こしていないか確認する
- 違法業者や個人間融資は利用しない
ここでは、上記で挙げたポイントについてそれぞれ解説します。
他社からの借入件数・借入額を減らす
借入件数や借入額が多い場合、多重債務により返済ができなくなる恐れがあるため、返済能力に問題があると判断されがちです。
審査に通るための目安は借入件数が2件以内、借入額が年収の3分の1以内です。
他社から借入をしている場合は、以下の方法で借入件数や借入額を減らしましょう。
- 毎月の返済額を増やす
- 繰上げ返済を利用する
返済額を増やしたり繰上げ返済をしたりして早期返済が実現すると、利息の負担が減って総返済額を抑えられるメリットもあります。
借入件数を減らしたい場合は、総量規制対象外であるおまとめローンの利用も有効です。
審査に通るためには安定した収入が必須
カードローンやクレジットカードの審査に通るには、安定した収入が必須です。
安定した収入とは継続的に一定の収入がある状態で、主に以下のような内容から判断します。
- 年収
- 勤続年数
- 年齢
- 勤務先
- 業種
- 雇用形態
例えば年齢に対して勤続年数があまりに短い場合、仕事が続かないのではという懸念が生じるため、安定した収入として認められない可能性があります。
そのため、無職はもちろんのこと、短期バイトや日雇いバイトも審査に落ちる可能性が高いです。
継続的に一定の収入があると認められるには、最低でも1年以上は継続して働く必要があります。
現在安定した収入がない人は、長期バイトや長期派遣などを通して毎月一定の収入を得ましょう。
過去5年間で金融事故を起こしていないか確認する
過去5年以内に金融事故を起こしている場合、カードローンやクレジットカードの審査に落ちる可能性が高いです。
金融事故とは主に以下のような状態を指し、信用情報機関に異動情報として5年間記録されます。
- 携帯料金の滞納
- クレジットカード代金の滞納
- カードローンの返済遅延
- 債務整理
- 代位弁済
カードローンやクレジットカードの審査では申込者の返済能力を重視するため、過去に金融事故を起こした人は返済能力に問題があると判断され、審査に落ちる可能性が高いです。
金融事故の情報は以下の信用情報機関にそれぞれ記録され、個人でも開示請求ができます。
- 株式会社日本信用情報機構(JICC)
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
異動情報に記録があった場合は、保存機関である5年が経過するのを待つしかありません。
金融事故が起きていざという時にお金が借りられなくなる事態を防ぐためにも、日頃から支払いや返済は滞りなく行ってください。
違法業者や個人間融資は利用しない
違法業者からの借入やSNSなどを通じた個人間融資などは、犯罪に巻き込まれる可能性があるため、少額の借入であっても利用は避けましょう。
違法業者や個人間融資は都道府県に貸金業者として登録がなく、法律を無視して貸付を行うため、年収の3分の1を超える貸付も受け付けています。
しかし、法外な金利を請求されたり執拗な取り立てに遭ったりする可能性が高く、最悪の場合は犯罪に巻き込まれる恐れがあります。
違法業者や個人間融資で起こり得る、被害の例は以下のとおりです。
- 年40.0%〜50.0%程度の金利を要求される
- 自宅の前で待ち伏せされる
- 1日に何度も電話がかかってくる
- 自宅の前に張り紙をされる
- 勝手に出前を注文される
- 家族や職場へ嫌がらせの電話をかけられる
- 拉致・監禁をされる
違法業者や個人間融資は自分だけの被害にとどまらず、家族や友人、職場の人まで巻き込む可能性があります。
そのため、借入をしたい場合は違法業者や個人間融資を利用せず、必ず都道府県に登録のある貸金業者や銀行のカードローンに申し込んでください。
総量規制対象外でも無制限に借りられるわけではない
いくら総量規制対象外で年収の3分の1を超える借入ができるといっても、無制限に借入できるわけではありません。
総量規制対象外の商品でもそれぞれ審査を行い、申込者の返済能力を判断しています。
例えば、住宅ローンの審査では申込者の返済負担率を確認します。
返済負担率とは年収に対しての年間返済額の割合のことで、一般的には35%を超えると審査に落ちる可能性が高いのです。
年間返済額には総量規制の対象となるカードローンなどはもちろん、自動車ローンのような総量規制対象外の借入も含まれます。
そのため、他社からの借入件数や借入額が多い場合は、総量規制対象外でも借入できない可能性が高いのです。
無茶な借入をすると返済の負担が重くなり、生活が困窮したり、返済できなくなったりする恐れがあります。
総量規制対象外でお金を借りる場合は、無理なく返済できる金額だけ借り入れましょう。